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まちを元気にする芸術文化(vol.6、2012.4)

 芸術文化の社会的なチカラ。元気な人がまちを元気にし、元気なまちに元気な人が集まる、そんな循環に芸術文化のチカラが発揮される…というお話の続きです。
 まちが元気になる、というと、例えば「シャッター通り」になってしまった商店街に活気が戻る、というイメージでしょうか。この場合「まちが元気」とはどういう状態を指すのでしょうか? 「お客さんがたくさん来て商売繁盛!」かもしれませんね。でも、元気なまちというのは経済的に活性化しているだけではないように思います。老若男女さまざまな人が集まり、そのまちを愛し誇りに思い、まちのために何かをしようという志ある人がたくさんいるまち。商店街の繁栄のためには、バーゲンや集客イベントなどの知恵を出し合って行動する人々がいたに違いありません。そんな人々の活動が経済的な成果に結びついたのであって、まずは人、そして活動が起こることが大切なのではないかと思います。そして、元気なまちになるために、芸術文化がチカラを発揮することもあるのです。(続く)

震災後の日本のために、芸術文化ができること(vol.5、2012.3)

 『希望学』という本を読みました。東京大学社会科学研究所 の先生方が書いた論文を集めた全4巻の著作。ちょっと難しい のですが、とても心をひかれる内容です。『希望学』は、社会の中 に希望が育まれる条件を考察する学問。希望とは、「具体的な 何か」をぜひ「実現」するという「意思」であり、そのためには「行 動」が必要です。希望を持って行動する人がたくさんいる社会 が「希望のある社会」だと言えるでしょう。そして希望を持ちその 実現に向けて行動する人は、他人と協力するのが上手な人、未 来に対する想像力を持つ人、ときには無駄な努力もいとわない 人、などの特徴が調査結果から見えてきたそうです。これらはコ ミュニケーション能力、想像力など芸術体験によって伸ばすこと ができる能力と重なり、一見、無駄や寄り道に見えることもある 芸術文化の営みに近いものがあります。 大震災から1年。希望のある社会をつくるために芸術文化が できること、たくさんありそうです。

乳幼児の芸術体験
〜感じる心は小さな身体にもちゃんとある〜(vol.4、2012.2)

 未来を担う子どもたちは希望の星。イキイキと育つために芸術体験をたくさんしてほしいものです。とはいっても、赤ちゃんではまだ何もわからないとお考えの方も多いのでは?
最近、0歳から2歳くらいまでの赤ちゃんの「はじめての芸術との出会い」に立ち会いました。赤ちゃんのためにつくられたコンサートや人形劇、そしてベビードラマと呼ばれるお芝居を保護者と一緒に鑑賞します。小さなお客さんたちは食い入るようにパ
フォーマーを見つめ、動きを真似し、笑い、身体を揺らしていました。印象的だったのは、人形劇の主人公が友だちに会えなくなり元気を失くすシーンで多くの子どもたちがぐずり出したこと。「飽きちゃった?」と思いましたが、経験豊富なパフォーマーによ
れば、子どもたちは主人公の気持ちを感じ取っていたたまれなくなり、泣く、「いや」「帰る」と言うなどの反応を見せるのだとか。幼くてもこんなに感じる心がある−赤ちゃんのときから身近な場所で芸術体験ができる、子どもに優しい社会をつくりたいと強く思った経験でした。(続く)

人を元気にする芸術文化〜医療・福祉編〜(vol.3、2011.11)

  元気な人がまちを元気にし、元気なまちに元気な人が集まる。そんな循環に芸術文化のチカラが発揮されるのが「芸術文化のまちづくり」。「人を元気にする」芸術文化のお話を続けます。
一度しかない人生、病気になっても障がいを負っても、そして高齢になっても、イキイキと自分らしく生きたいものですよね。そんなときに芸術文化が貢献できます。例えば「ホスピタルアート」。病院内に絵や彫刻を飾ったり壁や柱にアートで装飾を施したり、患者さんとアーティストが一緒に絵を描くなどの活動が行われることも。病院は治療のための場所ですが、長期入院ともなれば生活の場でもあります。味気ないものになりがちな入院生活、温かみのある空間や人とのコミュニケーションに包まれて過ごすことができるなら、病気と闘う勇気も倍増しようというもの。このようにQuality of Life(生の質)を向上させる芸術文化の取り組みも広がりを見せています。(続く)

人を元気にする芸術文化〜教育編〜(vol.2、2011.10)

 芸術文化の社会的なチカラ。それは人を元気にし、まちを活性化するチカラです。元気な人がまちを元気にし、元気なまちに元気な人が集まる、そんな循環に芸術文化のチカラが発揮されるのです。具体的にいうと????まずは、「人を元気にする」芸術文化のお話をしましょう。
私が主宰するNPOアートサポートふくおかでは、学校に芸術家を派遣し音楽、演劇、美術、ダンス、伝統芸能など芸術の体験授業を行っています。鑑賞だけではなく体験型の授業。子どもたちが芸術家という、親とも先生とも違う独自の価値観を持った大人と接する機会でもあります。狙いはコミュニケーション能力や協調性、生きる力の向上。その現場でお手伝いしている私に小学生の男の子が「ワクワクドキドキやねぇ!」と話しかけてくれたことがあります。ワクワクドキドキ。こんな体験を子どものときにたくさんしていたら、将来つらい思いをすることがあっても乗り越えられるのではないでしょうか。(続く)

芸術は『勇気のミナモト!?』 (vol.1、2011.9)

 「芸術文化を誰もが身近に楽しめる環境づくり」に取り組むNPO「アートサポートふくおか」代表の古賀弥生です。活動を始めて10年、福岡県内の地域や学校で音楽、演劇、美術などさまざまな芸術文化を体験できるワークショップを実施してきました。こうした活動から見えてきたこと、感じたことを綴ります。
私が現在の活動を始めたきっかけは、学生時代から趣味で演劇をしていたことです。舞台でライトを浴び、気持ちよく演劇活動を続けていた日々。しかしある時、忘れられない出来事が起こりました。公演の際にお客様に書いていただくアンケートに、若い女性のお医者様がこう書いてくださったのです。「集中治療室で生死の瀬戸際にいる患者さんと向き合う日々。少々疲れていたのだけれど、今日は友人に誘われてお芝居を見に来ました。これでまた、あのナースコールと機械の音に満ちた職場に帰っていく勇気がわきました」。大きな衝撃でした。演劇に人が生きる勇気を与える力があることをそのとき始めて知ったのです。演劇に限らず芸術文化は趣味の世界のもの、好きな人が楽しむもの、興味がない自分には関係ない・・・そう考える人も多いのではないでしょうか。でも、芸術文化には大きな社会的な力が秘められているのです。(続く)